美術家・首藤教之さん(88歳)の著書「伝言ノート」をもとに、1945年6月19日の福岡大空襲の体験と証言を後世の人のために記録し伝える。当時少年だった彼にとって、飛行機は零戦の設計をした堀越二郎と同様に鳥のように空を飛ぶ「夢の乗り物」だった。しかし、戦争を境に空襲警報、ひゅるひゅると落ちてくる焼夷弾の落下音、燃える街を逃げ惑う人々を目にしたトラウマにより、飛行機は人殺しの「悪夢の兵器」へと変貌する。
1945年8月上旬、静まり返った夏空を見上げると、そこには偵察にきたB29が雲の合間を「銀色のブローチ」のように滑空していった。希望と恐怖が入りまじり、なんとも言えない情景が鮮烈に心に焼きついた彼は、自身の「芸術の力」でかつて悪夢を夢に変えるため人を殺さない「やさしい飛行機」を描き続ける。
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